そごう美術館は電車の中の広告などで見て何回か行ったことがありますが定期的にチェックはしていませんでした。 海外の営業に横浜の案内をしようとネット検索していてこの展覧会を見つけました。来客・接待の予定から13日しかチャンスがないことが分かり大慌てで出かけました。デパートなので夜8時まで開いているので助かります。仕事を終え駆けつけて6時半には入ることができました。 松伯美術館所蔵「上村松篁展」 開催期間:2008年2月29日(金)~3月24日(月) 開催場所:そごう美術館 観覧料:一般:900円 概要:近代日本画壇に多くの花鳥画を残した上村松篁(1902-2001)。 松伯美術館の所蔵品より、初期から晩年に至る代表作65点を展覧。 上村松篁は、明治35年(1902)京都市に生まれました。母は美人画で名高い女流画家上村松園。幼いころから絵に親しみ京都私立美術工芸学校、京都市立絵画専門学校に進み、西山翠嶂に師事しました。 そして大正10年(1921年)「閑庭迎秋」で院展初入選し、以来、帝展、新文展を舞台に、伝統的な写生に根ざしながら近代感覚溢れる花鳥画の世界を展開しました。 戦後は、「創造美術」を結成し、緻密に計算された画面空間と、自然に対する深い愛情が見事に溶け合う品格のある色鮮やかな美しい独自の花鳥画の世界を築きあげました。 この間、京都市立美術大学教授や日本芸術院会員などを歴任し、昭和59年(1984)には文化勲章を受章しています。 まず最初の絵は2羽の鶴でした。「仙禽唳光」(21歳)。その大胆な構図、詳細にいたるまで丁寧な写生、精緻な筆使いなど圧倒されました。鶴の荒らしい息使い、羽の音が聞こえてきそうです。 隣に19歳で院展で初入選した「閑庭迎秋」。 絵の大きさに圧倒されながら遠くから近くから見ます。近づいて鶏の詳細を見ます。その頭の精密さ感動を覚えます。本物より鶏らしいです。羽にいたってはその薄くて軽い羽が揺らいでいるようです。写生を大事にしていたことが現れています。 椿(22歳)はなんでもない近くの公園の椿を写生し書き上げたものです。精緻さにびっくりします。葉一枚一枚が丁寧に描かれています。 この後、水禽(23歳)など大型の精緻な絵が続きます。しかし、この絵でもそうですが6羽描かれているのですが1羽を観察して6羽にしたという感じの絵で不満が残ります。 そして、金魚(27歳)です。金魚13匹が個性を持っています。西山翠嶂も殻を脱いだとほめたようです。 晩秋(28歳)大胆な赤色が新しい挑戦と考えられます。 このころ、自分の子供を描いた冬暖(31歳)など人物も描き始めます。「羊と遊ぶ」に成長した子供が描かれていますが前者ははっきりした色、後者は淡い色使いであるが両者ともやさしさにあふれた絵となっています。 遠くからも目だっていた絵の前に来ました。月夜(38歳)です。 写真では分かりませんがその青と月明かりの黄色、ウサギの白が鮮やかに描かれています。 隣に「早秋」(39歳)。「晩秋」と全く違った絵です。 戦後になり、「創造美術」に出品した樹陰(46歳)から、植物中心に構図や鮮やかな色使いが目立ちます。 有名な鴛鴦(おしどり)(63歳)です。鴛鴦の群れの前に広い空間を置くことで絵に広がりを持たせています。構図だけでなく色使いや技巧もため息が出ます。 この後あまり好きな絵は有りませんでした。絵は丁寧で綺麗なのですが動きや自然の表現に力がありません。表面的に見えます。 展示終わりごろの水温む(86歳)はちょっと違いました。これは水はどこにも描かれていないのに椿は浮かんでゆっくり流れている情景が浮かびますし、鳥も飛び出しそうです。 90歳に入り墨絵の世界に入り新たな境地を開きますがこうやって一生分の仕事を見せられると衰えがはっきり見えます。2001年98歳で亡くなります。 今回は初期から晩年までの代表作を一挙に見ることができました。若いころの精緻で力強い作品が好きです。品格が備わってきたとされる戦後の作品にはあまり魅力を感じませんでした。 昔はあまり興味のなかった日本画ですが、京都の新幹線から吉兆の横を通る通路に学生の日本画が展示されているのを見てその素晴らしい作品に感心していました。先月横山大観を見て、その絵画に触発されました。今月末から東山魁夷の展示会があります。また、この世界に使ってみたいと思います。 とにかく本物はすごい。感動します。出かける価値があります。 上記写真は松伯美術館の所蔵を紹介した本から撮りました。この本には母の松園、息子の淳之の作品もあります。一度行ってみたい美術館です。 [美術鑑賞目次]
by AT_fushigi
| 2008-03-20 23:41
| 美術鑑賞・博物館
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